【短編集】片想い、余命2日
 そう思うと苦しくて、壱の顔すら見れない。


 今日は、いつも通りにはできないらしい。


「由依?」


 私がなにも答えないことを心配したのか、壱は俯く私の顔を覗き込んできた。


「もしかして怒った?」
「ううん、怒ってないよ」


 上手く笑えなかったのは、壱の顔を見ればわかる。


 これは、追求される流れだろう。

 それだけは避けたい。


「……ごめん」


 心配の表情をする壱に気付かぬふりをして、私は逃げるように、化学室に向かった。


「相変わらず酷なことするよね、奴は」
「深優……」


 自分の席でうつ伏せになっていたら、声をかけられた。


 深優の声を聞いて、置いてきてしまったことを思い出す。


 私の隣の席に座る深優に謝ろうと思ったけど、思うように声を出せない。


「大丈夫?」


 大丈夫だと言いたいところだけど、強がりだってすぐに気付かれそうだったから、やめた。


「もう……好きでいるの、つらい、かも」


 ここ最近は、特にそう思うようになった。

 壱の姿を見かけても、苦しいばかり。


 だから、壱を好きな人だと思うことは、もうやめたい。


 なんて、そう簡単にやめられるなら、十年も片想いなんてしていないけれど。
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