【短編集】片想い、余命2日
 そんな私の悩みを察してくれたかのように、深優は優しく頭を撫でてくれた。

 その温かさに、思わず泣きそうになってしまった。





 化学の授業に集中できないまま、授業は終わってしまった。


 あとで、深優に教えてもらおう。

 そう思いながらノートを閉じると、周りが少しだけ騒がしくなる。


 何事かと思って顔を上げると、壱が化学室の出入り口に立って、誰かを探している。


 今、一番会いたくない人。

 壱の視界から逃げることはできなさそうで、私はひとまず、壱に気付いていないふりをした。


「由依」


 壱が探していたのは、私らしい。


「由依、話がある」
「わ、私はない」


 どうしたって、不自然な態度だ。


 でも、それでも、壱と話さなくていい道を作りたかった。


「由依がなくても、俺があるんだよ」


 壱は強引に連れ出そうと、私の手首を掴んだ。


 嫌だ。

 行きたくない。


 そう言いたいのに、逃がさないと言わんばかりの力に、言葉が出てこない。


「その手、離してくれる?」


 どうやって逃げようか考えていたら、深優が壱の手首を掴んだ。


「花村……」
「由依が嫌がってる。わからないの?」


 壱が私を見る。
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