【短編集】片想い、余命2日

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『いち君、なんでも一番で凄いね』


 誰に褒められるよりも、出会ったころに由依が言ってくれたこれが、ずっと心に残っている。

 そのときの笑顔だって、忘れられない。


 ほかにも、勉強を教えてほしいと言われたとき。


『壱、こんな難しいのも解けるの? 凄いなあ』


 中学生になっても。


『いろんな運動部から声をかけられたらしいね。なんでもできるなんて、相変わらずかっこいいことするね』


 由依はいつも、俺に自信を持たせてくれた。


 初めて由依に彼女を紹介したときも。


『美人さんと付き合えるなんて、さすが、壱だね』


 恋愛なんて微塵も興味なかったけど、由依がそう言って笑ったから、俺は認めてもらえたような気がして、何度も由依に報告をするようになった。


 今日だって、いつもみたいに『壱、凄いね』って笑ってくれると思っていた。


 それなのに、由依は真逆の表情を浮かべていた。

 まるで、傷ついたような顔。


 俺が傷つけたのだろうか。


 それが気になって、すぐに話をしに行ったのに。


「頭は冷えた? 勘違い男の片倉壱くん?」


 放課後、もう一度由依のところに行くか悩んで教室に留まっていると、怒りが込められた、意地の悪い声がした。
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