【短編集】片想い、余命2日
 すると、花村の纏う空気が、より攻撃的になった。


 俺が間違ったことを言ったのは、言葉にされなくてもわかった。


「由依はそんなことを言うような子じゃない。そんなことも忘れたの?」
「まさか」


 だから信じられなくて、確認したのだ。


「由依は本音を押し殺しちゃうところがあるから、自分でも知らないうちに自分を傷付ける。だから、片倉といてもつらいだけだってわかってても、あんたが話しかけたら、由依は無理をしてでも笑顔を見せる」


 なにを根拠に言うのかと思ったが、昼のあの笑顔を思い返すと、あながち間違っていないのかもしれないとも思った。


 由依は俺といるのが、つらい。


 その言葉は、花村が思っているよりも、そして、俺自身想像しているよりも、胸に突き刺さった。


「もう、いい加減に由依を解放してあげて」


 敵意むき出しの視線はなく、ただ、由依を心配する色に、俺にできるのは、大人しく引き下がることしかないのだと思わされる。


 由依に関わらない。

 それはつまり、もう、由依の笑顔が見れないということ。


 いや、俺がわがままを貫いたとて、由依が笑いかけてくれる未来なんて、もうないのかもしれない。


「なんで、片倉が絶望的な顔をするの」
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