桜の雨



先生が去った後、その場に立ち尽くしていた私のもとに桃を含めた友だち3人が戻ってきた。

「ごめん!勢いで逃げたら芽玖のこと置いていっちゃった。ごめん、怒ってる?」
と申し訳なさそうな顔で桃が謝る。
他2人も、「ごめんね」「つい夢中になって逃げちゃって…」
としょんぼりした顔をしている。

「大丈夫だよ」と言いかけた瞬間、目が合った桃は
「え!芽玖の顔が真っ赤だ!もしかして熱中症?どうしよう保健室行かなきゃ!」
と慌て始めた。

やはり私の顔は真っ赤だったようで、他2人も私を保健室に連れて行こうとする。
普段冷やかしてくる桃は肝心な時に鈍感で、ついさっきまで私が先生と一緒にいたことに気づいていないみたいだ。
私は必死で熱中症ではないことを伝え、その場をなんとかおさめた。



結局その日は桃に話をすることができなかった。
桃と2人きりになるタイミングがなかったのもあるし、そして何より自分のこの感情を話すことが恥ずかしかった。

この日が夏休みの最後の登校日だった。
桃は部活が忙しいみたいだし、会うのは夏休み明けになるかもしれない。
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