桜の雨
好きの始まり
新学期
2週間ぶりの登校だ。
結局、夏休み中は桃に連絡をとることもなく、ただひたすら自問自答を繰り返していた。
早く桃に会って話したい気持ちと、恥ずかしい気持ちが葛藤している。
今日話すか話さないか…うーん、と考えこんでいると
「おはよー!芽玖!久しぶりだね~!夏期講習終わったと思ったら部活忙しくて全然遊べなかった…もう夏休み終わりとか、早すぎだよね」
と桃の元気な声が飛び込んできた。
「あれ?なんでそんなに考えこんだ顔してるの?ってか痩せた?」
桃は不思議そうな顔をしている。
「あっ…えっとね、桃に話たいことあるの」
思い切って話すことにした。
「え~?話ってなんだろ~!あ!あたしもね、芽玖に聞きたいことあったの。夏休み中に聞こうと思ってたのに、全然話す時間なくてさ…だから今日学校終わったら2人で寄り道しながら話そ!」
いつもの調子で桃と放課後の約束をした。
でも聞きたいことって何だろう。
思い当たることがない。
それはともかく、桃と話す約束ができたことに、ほっとしながら教室に向かった。
朝のチャイムが鳴ると、春野先生が教室に入ってくる。
この時間が久しぶりな気がして、少し懐かしくなる。
「夏休み明けも全員出席で嬉しいです」
先生はニコニコしている。
一瞬目が合った気がして、また心臓がドキドキしてしまった。
夏休みの間、ずっと先生のことを考えていた気恥ずかしさもあってか、先生と目を合わせることができない。
目を合わせたら、全部見透かされてしまいそうな気すらする。
また顔が赤くなっているんじゃないかと心配になった頃、やっと朝のホームルームは終わった。
このままずっとこんな感じじゃ、毎日心がもたない。
そして何より、先生の個別学習が受けられなくなってしまう。
これは早く何とかしないといけない。
桃にきちんと話して、何か対策を一緒に考えてもらおう。