桜の雨
ホワイトデー
もうすぐ、待ちに待ったホワイトデーだ。
先生からのお返し何がもらえるんだろう。
本音を言うと物はなんでもよくて、先生からプレゼントをもらえることが嬉しい。
わくわくの最高潮だったホワイトデー前日、衝撃的なニュースを耳にした。
「ねぇ、知ってる?春野先生、3月いっぱいでいなくなっちゃうらしいよ」
「えー!ショックー!でも1年でいなくなっちゃうのって珍しいよね…」
桃と廊下を歩いていると、そんな会話が聞こえた。
情報網の桃でさえも初耳だったらしく、一目散に春野先生について話している二人組のもとへ駆け寄る。
「なにそれっ!どういうこと?」
桃は、信じられないというような目をしている。
「私たちもよく分かんないんだけど、4月から中等部の担任補助になるらしいよ」
私が通う学校は初等部、中等部、高等部、大学がある。
同じ学校とはいえ、それぞれの学校は少し離れた地域にあって中等部は、ここから電車で30分から40分ほどかかる。
それぞれの学校が一緒にイベントをやることは無いから、偶然会うなんて無いに等しい。
私はショックだった。
先生と会えなくなってしまう。
先生と会えなくなるなんて、考えてもいなかった。
来年、クラスの担任の先生が春野先生じゃなくなったとしても、私が卒業するまで、先生はこの学校にいると思っていたのに……
桃は私の顔を覗き込むと、慌てて私の顔にハンカチを当てた。
ハンカチからはいい匂いがする。
「芽玖泣いちゃってるよ…無理もないよね……あたしですら寂しいもん」
いつの間にか涙が出ていたみたい。
先生と一緒にいられる時間は、あと少し。