桜の雨

夏期講習が終わり、廊下で友だち4人とおしゃべりをしていたときのこと。
私を除く3人はスマホを使いながら喋っている。
よくみる光景だったから、私は何も気にせず普段通りにおしゃべりをしていると…

突然、春野先生が現れた。
私以外の3人は「きゃー!」と言いながら慌てて廊下を駆け出した。

春野先生は不思議な顔をして立っている。
たぶん、みんながスマホを使っていたところを見ていなかったんだと思う。

私は逃げる理由もない、と考えていた矢先。
スマホのバイブ音がポケットから響きわたる。
初めは自分ではないと思ったが、間違いなく自分のポケットの中から振動音と震えを感じる。

新しいスマホに変えて、機械慣れしていなかったせいか、きちんと電源が切れていなかったみたいだ。

桜木(さくらぎ)の方から、振動音が聞こえるんたけど…学校でスマホは電源を切っておく決まりだったよね?」
先生は普段は見せない厳しい顔をしている。

私は咄嗟に
「ごめんなさい。電源切ったと思ったんです。新しいスマホに変えてから使い方慣れてなくて、それでちゃんと電源切れてなかったみたいで…」
と半泣きになりながら答えていた。

スマホの使い方に慣れてなかったとはいえ、素直に謝りたかったけど、いつも優しい先生が少し怒っている姿に怖気づいてしまった。
それと、先生に嫌われてしまうかも、という不安も心をよぎる。


< 8 / 45 >

この作品をシェア

pagetop