桜の雨
先生は怒っているのかいないのか、よく分からない顔で
「スマホ見せて」
と言ってきた。
恐る恐る先生にスマホを渡す。
きっと没収だ。
スマホを手にした先生は、さささっと操作し
「はい」
と電源を切ったスマホを私に返してきた。
わけも分からず
「何で返してくれたんですか?」
と聞くと
「桜木が嘘ついてるように見えなかったから。でももし、また電源切れてなかったところ見つけたら、次こそは没収だから。このこと周りの人たちに見つかったらめんどくさいから、みんなには秘密ね」
いつもの優しい笑顔で、私の頭をぽんぽんした。
じゃあ、と先生はすぐに去ってしまった。
ただ、私の心臓のドキドキは止まらなかった。
顔が熱い。熱でもあるのかもしれない。
2人だけの秘密、だって…。
こんなことは初めてだった。
からかわれるかもしれないけど、桃に話してみよう。
何かアドバイスがもらえるかもしれない。
初めての感情に、どうしたらいいのか分からなくなっていた。