桜の雨

先生は怒っているのかいないのか、よく分からない顔で
「スマホ見せて」
と言ってきた。

恐る恐る先生にスマホを渡す。
きっと没収だ。


スマホを手にした先生は、さささっと操作し
「はい」
と電源を切ったスマホを私に返してきた。

わけも分からず
「何で返してくれたんですか?」
と聞くと

「桜木が嘘ついてるように見えなかったから。でももし、また電源切れてなかったところ見つけたら、次こそは没収だから。このこと周りの人たちに見つかったらめんどくさいから、みんなには秘密ね」

いつもの優しい笑顔で、私の頭をぽんぽんした。

じゃあ、と先生はすぐに去ってしまった。
ただ、私の心臓のドキドキは止まらなかった。
顔が熱い。熱でもあるのかもしれない。

2人だけの秘密、だって…。



こんなことは初めてだった。
からかわれるかもしれないけど、桃に話してみよう。
何かアドバイスがもらえるかもしれない。



初めての感情に、どうしたらいいのか分からなくなっていた。
< 9 / 45 >

この作品をシェア

pagetop