トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー

警備の仕事

チェイサーの初仕事は、離宮の夜間警備だった。
ブラントンが言っていた。

ここは、リアランの母君のために、建てられたものだと。
規模こそは小さいが、
中央に円柱の立った玄関があり、建物が両翼にある。

壁面をレリーフが飾る、格式のある建物だ。
玄関脇からは、つる薔薇が茂り、
淡いピンクの花をつけていた。

現在、王の一家は、王宮内の私邸で生活している。
リアラン様だけが、ここで一人、
暮らしているのだ。

チェイサーは、テラスにむかった。

上には棚がしつらえてあり、
白い小花が房になり、
あちこちに垂れ下がっている。

初夏の夕闇に、花の香りが漂い、
微かな風にたなびいて、
湿り気を帯びた大気に広がる。

庭は一面の芝で美しいが、
周囲はうっそうとした雑木林に囲まれている。

ダリルは庭を駆け回って、
穴を掘りたそうにしていたが、
チェイサーが指を鳴らすと、全力で戻って来た。

夕暮れ時、
チェイサーは庭の片隅に、テントを設営していた。

ダリルは、うれしそうに芝の庭を飛び跳ね、ゴロゴロ転がっている。

ランタンを灯し、レンガを組んだかまどで、小さなたき火をつくった。

満月がくっきりと浮かび、美しい夜だ。
クラヴィーアの音色が、聞こえる。

チェイサーは、ほうろうびきの
カップにコーヒーを注いだ。

敷地に誰かが入り込めば、ダリルがすぐに反応する。

それは問題ない。
問題なのは、リアラン様が突然、
失踪するということ。
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