トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
犬はそばでお座りをして、尻尾をブンブン振っている。

「ダリルと言ったな」

リアランはしゃがんで、ダリルと同じ高さになった。
チェイサーも、同じように片膝をついた。

「あなたの匂いを覚えさせます。
手を握って、こぶしを作ってください」

リアランは、そでの長いローブからそっと手を出し、小さなこぶしをつくった。
白い、淡雪のような手だ。

「ダリル、ご挨拶を」

犬は頭を下げて、リアランのこぶしをペロリとなめた。

「うわっ」
小さな声をあげて、ふっと笑顔が出た。

青い炎が揺らめく、
チリチリするような緊張感をまとっていたリアランが、笑ったのだ。

それは幼い童女のようで、邪気のない笑顔だった。

「かわいいな。ええと何か・・
おやつをあげたいのだが」

リアランはクスッと笑い、
ねだるように、チェイサーを見上げた。

かわいいのは・・あなたですよ。

チェイサーも表情を緩ませ、
ポケットから干し肉の欠片を取り出した。

「鹿肉を干したものです。あなたから」

干し肉の細長く切った欠片を、
リアランに差し出した。

干し肉をつまんで、
恐る恐るダリルの口元に差し出した。

パクッ
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