トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
あっという間に、
ダリルは肉を飲み込んでしまった。

「触ってもいいかな」

「ええ、大丈夫です」

リアランはためらいながら、
ダリルの頭をなで、驚いたようにチェイサーを見た。

「すごい、モフモフだ」

「長毛種ですから、あまり触ると、手が犬くさくなりますよ」

チェイサーは、少ししかめた顔を作った。
ダリルは愛玩犬ではない。

そう、感情が入りすぎるのはよくない、そう思ったのだ。

「リアラン様、風が冷たくなってきています。
お部屋にお入りください」

リアランはうなずくと、
立ち上がり、自分の指先を鼻にあてた。
「うわっ、確かに、犬の臭い」

「ですから、手を洗ってください」

リアランの子どもっぽいしぐさに、思わず、チェイサーは微笑んだ。

トゲトゲが消えて、
そのまとう雰囲気は柔らかいものになっていた。

「うん、おやすみ」

「おやすみなさいませ」

チェイサーは頭を下げ、リアランは折り戸を閉めた。
しばらくして、また、テラスの折り戸が開いた。

老執事が、手招きをして、白パン、ハムとチーズ、熱い紅茶の入ったかごをテラスに置いた。

「リアラン様のご指示です」

「ありがとうございます」

礼を言って、
チェイサーは2階を見上げた。

自分の新しい警護対象、
同じ王家の血を引く立場だが、
ずいぶんと距離がある。

もちろん年齢もだが、
そして、重責を背負う立場になる。
チェイサーは、小さくため息をついた。
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