トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
「俺が、パンケーキを焼きましょう。すきっ腹に、酒はよくない」

手慣れた手つきで、
小麦粉とベーキングパウダーを混ぜ合わせ、卵を割り入れた。

その一連の動きを見て、リアランは頬杖をついて言った。

「随分とうまいものだな」

「ええ、俺の育てのオヤジは居酒屋をやっていたので、
まかないを作るのは、俺の役目でしたから。
料理は好きですし」

そう言いながら、
チェイサーは別の鍋でミルクを沸かし、紅茶の葉を入れて煮出した。

「砂糖を入れて甘くしますか?」
「うん」
リアランは小さく首を振った。

チェイサーは手際よく、フライパンを振って、パンケーキを上に放り投げた。

ポンと皿の上にのせて、リアランの前に置いた。

「チョコレートより、温かい物のほうがいでしょう」

リアランは、両手で紅茶のカップを温めるように持っていたが、
まだ、口がへの字にゆがんでいる。

「メープルシロップを、たっぷりかけてですね」

チェイサーは、シロップ入りのボトルを傾けて、パンケーキに注いだ。

メープルシロップの黄金色の輝きを見て、不機嫌さの仮面が溶けてしまったのか、
リアランは、うれしそうにうなずいた。
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