トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
「お嬢様たちが、あなたに注目しているぞ。
よければ、踊ってきてかまわないが」

「いえ、俺は護衛ですので、
リアラン様のお側を離れるわけにはいきません」

チェイサーは、気真面目に答えた。

「ふーーん、ブラントンは、楽しくホイホイ踊っていたけど」

リアランは、チェイサーを試すように見上げた。

次から次へと、リアランの前には挨拶する客人がやってくる。

自分が王族と近い関係であることを、周囲に見せつけるのにはよい機会なのだ。

やっと、人が途切れた時、
チェイサーはリアランに小声で声をかけた。

「お疲れではないですか。
どこかで休憩を」

「大丈夫だ。
これも公務の一環だから」

リアランはそう言ったが、
その声は張りがなく、疲れがにじんでいた。

チェイサーがどこか休めるような場所がないか、周囲を見渡した時だった。

「おお、これは、リアラン様、
おや?今日は、ブラントン殿と
御一緒ではないのですか?」

そう声をかけたのは、
40過ぎの、赤毛で鼻の頭が赤い紳士だった。

「アレシ殿、王宮の宴では、
いつも珍しい酒を提供していただき、ありがとうございます」

リアランは微笑んで、手を差し出し、赤毛の男はかがんで、その手を取り、自分の額に軽く当てた。
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