トランス・ブルー・ラブ リアランとチェイサー
「先日、ブラントン殿と約束したのですが・・
今度、私共の醸造所でつくった新作の酒を、試してみたいとおっしゃったので、
今日は、試作品を2本ほどお持ちしたのですが」
紳士は、手提げの紙袋を差し出したので、チェイサーが、その袋を受け取った。
「私が本日、ブラントンの代理できましたので、
よろしければお預かりします」
赤ら顔の紳士は商売上手だ。
「騎士団では、いつもうちの酒をごひいきにしてもらっているので、よろしくお伝えください。
それでは、リアラン様、失礼したします」
紳士が丁寧に頭を下げるすきに、
チェイサーはリアランの腕を取った。
ずっと立ちっぱなしで、
ふらついているのに気が付いたからだ。
「リアラン様、客人が来ない所で休みましょう」
チェイサーはリアランを、
庭の裏手、背の高い植え込みの奥に誘導した。
木がうっそうと繁っているが、
下草が生えて、木漏れ日が点々と柔らかい光を落としている。
人目が無くなり、緊張が解けたのか、リアランは木の幹に背中を
あてて座り込んだ。
「ああ、疲れた・・だけど王宮での謁見は、もっと時間がかかるから大変だ」
膝を立てて、顔を埋めている。