トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
マダム・ルルの寝室は、
サイドテーブルとベッドだけの
簡素なもので、静かな部屋だった。

「何か、特別なお話かしら?」
マダム・ルルが小さなグラスに、酒をつぎ終わると、
チェイサーは、単刀直入に聞いた。

「この国の・・Xについてなのだが」

そう言って、酒を一口飲んだ。

「18才になる前に、性別がオンナになっているということがあるのだろうか?」

マダム・ルルの営業用笑顔が引っ込み、額にしわが寄った。

「何から、説明したらいいかしら?
そうねぇ、Xといってもグラデーションがあるの」

マダム・ルルは、サイドテーブルの引き出しから、葉巻を取り出した。

「グラデーション?」

チェイサーは、聞き返した。

「そう、オトコに近いXから、
オンナに近いXまで、いろいろ多様性があるってこと。
だから、18才で施術を受ける前に、性別がはっきりしているケースも、珍しくないわ」

チェイサーは、次の質問をした。

「18才になる前に、本人の意志とは別に、すでに性別が決まっていた・・
というわけか?」

「ええ、性別決定の施術に使う薬が、
いらないわけね」

マダム・ルルは、葉巻に火をつけた。

「もし、体の変化、つまり女性化が進んでいるのに、
本人がオトコになることを、
望んでいるとしたら、どうなる?」
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