トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
チェイサーの疑問に、
マダム・ルルは一瞬、目を伏せ、
紅い唇から葉巻を離した。

「私とは、逆のケースってわけね」
「え・・・・?」

室内に、葉巻の煙がたなびいていく。
マダム・ルルはその煙の行く末を、しばらく眺めていたが、

「私は、体のオトコ化が、18才になる前に進んでしまったの。
筋肉がムキムキついてくるし、
声も低くなるし。

背が伸びて、ガタイが良くなっちゃって。
私は、可愛いオンナの子になりたかったのに。
その時、好きなオトコがいてね。
結婚したいと思っていたから」

チェイサーは、美しいマダム・ルルを見つめた。

「だから、私は何としてもオンナになりたかったの。
それで、通常より多くの薬が必要で、治療を受けたのだけど・・

その副作用でね、
オトコに抱かれても、喜びを感じられない、
もちろん、妊娠もできない体になったというわけ」

マダム・ルルは窓から見える、
建物に、切り取られたような夜空を見上げた。

「私の好きな男は、他の女と結婚したわ。
子どももできたし、彼は今、幸せに暮らしている。
あの人が幸せなら・・
それでいいと思うようにしたけど」

そして幕引きのように、カーテンを閉めた。
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