トランス・ブルー・ラブ リアランとチェイサー
リアランが目覚めた時、
そこは、修道院の病室だった。
「気が付かれましたか?」
柔和な老女である修道女が、
編み物の手を止めた。
「貧血ですね。
月のものが始まると、おつらいでしょう」
リアランは手を額に当てて、言った。
「騎士団長のブラントンに、連絡をお願いします。
こちらに迎えにくるようにと」
修道女は、編み物のかごを片づけながら
「従者の方が、控室でお待ちですが・・お呼びしますか?」
リアランは手を額に当てて、小さな声で言った。
「チェイサーに連絡を頼みます。
呼んでください」
バタン
チェイサーが、静かにベッドに近づき、その前にひざまずいた。
「その、出過ぎたまねをして、
申し訳ありません・・ですが」
リアランは天井を見つめたまま、
その言葉の先をさえぎった。
「ブラントンに、この場所を伝えて欲しい。
私が母の事で、この修道院に来たと言えば、問題はないだろうから」
それから、ふっと息を吐いた。
「これが、私の生き方なのだ。
チェイサー、あなたには、心配と負担をかけてしまった」
チェイサーは、歯をくいしばった。
何を言えばいいのだろう。
「あなたの事が心配です、そして・・」
カーーン、カーーン カーーン
修道院の鐘が鳴り始め、
先ほどの修道女が入って来た。
「面会時間は終了ですので、
お引き取りください」
柔和な笑顔で、退室を促した。
チェイサーは、一礼すると、
「そして・・」の次に言うであろう言葉・・
「あなたを愛している」という言葉を飲み込んだ。
最後に振り返った時、
リアランが、目を閉じているのが見えた。