トランス・ブルー・ラブ  リアランとチェイサー
ブラントンが部屋から出て行くと、チェイサーは、部屋の窓から見える王宮の尖塔に目をやった。

それから、緑の茂る中庭に視線を移した。

中庭は、騎士団の休憩場所にもなっていて、王宮とつながる建物と回廊がつないでいる。
詰所の護衛兵士は、訓練で出払っていて、ひどく静かに感じられた。

リアランは、これからずっと王宮という鳥かごで、
一人で苦痛と孤独に耐える生活を送るのだろう。

チェイサーは、額に指を当てた。

運命は一瞬、交錯するが、宿命は離別を暗示する。

あれから、リアランは修道院から、王宮の奥にある王族専用の病院に入院したと聞いた。

強い希望で、18才になる前に
性別決定のための治療を始めるために。

ワォン、ワン、ワン

何か気になったのか、ダリルが吠えながら、窓を乗り越えて中庭から回廊に走って行く。

「ダリル!!待てっ!」

窓から身を乗り出して、命令したが、犬は無視して走っていった。

チェイサーも急いで、部屋を出て、ダリルの後を追った。

中庭に出たチェイサーの目に飛び込んで来たのは、
王宮の回廊から病衣のまま、
リアランが、泣きながら走って来る姿だった。
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