君の全部になりたい【完】
あんな夢を見ちゃうほど。
うなされてしまうほど、寂しかった。
「それは…申し訳ございません」
「どうして一度も日本に帰ってこなかったの?」
別に責めたいわけじゃないけど、理由が聞きたい。
私のこと嫌いになっちゃった?
海外に逃げるほど、私のこと嫌だった?
「覚悟を決めるためです。」
まっすぐ、力強い目。
「覚悟?」
予想外の回答に思わずおうむ返しをしてしまう。
「美桜様にお仕えする覚悟です。
………中途半端なまま帰ると、俺は美桜が欲しくなるから。」
ぽつりつぶやかれた小さな声を私は聞き逃さなかった。
私を映し、激しく揺れるダークブラウンの瞳に、頭が混乱する。
それはどういう意味?
「今なんて、」
「…なんでもございません。明日の準備を致しましょう。」