君の全部になりたい【完】
私の髪をひと束手に収めて、ブラシで梳かす爽を鏡越しにちらっと見る。
…本物の爽だ。やっぱり帰ってきてくれたのはすごく嬉しい。
思わずにやけてしまう顔をなんとか隠した。
「出来ました。」
「み、三つ編みって…」
出来上がったのはしっかりとした三つ編み。
もっとゆるっとふわっとさせないの?
これじゃまるで、真面目な優等生コーデだよ。
「イギリスではこれが最先端です。」
文句を言いたげな私の雰囲気を察したのか、そう言って静かに微笑む爽。
「本当?」
「はい。」
「なら、いいけど…」
イギリスってこんなのが流行ってるんだ…
「ふっ、単純かよ。」
そんな風に笑う爽の策略に私は全く気づかないでいた。