君の全部になりたい【完】
3.恋なんて、まだ知らなくていいのに
週末、実に一ヶ月半ぶりに両親がシンガポールから帰国した。
爽もさっそく挨拶をするため、ダイニングリビングへ2人で向かった。
「あら、爽くん久しぶりねえ。ますますイケメンになっちゃって」
ママが爽を褒める。
私のママは我ながらすごく綺麗だと思う。
なんてったって寺門家のメイドだったママに一目惚れして、パパがアタックしたんだもんね。
「奥様、ご無沙汰しております。相変わらずお綺麗で。」
「ちょっと、私の妻を口説くとは何事かね」
そう言って奥の方から笑いながら登場したのは私のパパ。
おじいちゃんが亡くなってから寺門財閥を支える、正真正銘のトップ。
そしてママにぞっこんなの。
「旦那様、ご無沙汰しております。」
「ずいぶんと、男らしくなったな。」
そう言って爽の肩に手をかける。
…前まであんなに身長差があったのに、今は爽の方が大きい。