君の全部になりたい【完】
オレンジ色の西陽に包まれた爽の姿。
表情は読み取れないままだった。
すると爽が近づいてきて、
アールグレイが微かに香ったと思えば、
爽の右手が、私の頬を優しく包んで、
「諦めたはずなのに……全然だめですね」
どくんと胸がなる。
こんなことを言うの。
どうしてこんな風に、優しく触れるの?
言葉の意味も、行動の意味も分からなくて、黙り込んでいると『そろそろ時間なので戻りましょうか。』と元通りの爽になった。
私は頭が追いつかなくて、うん、と返事をすることしかできなかった。