君の全部になりたい【完】
すると、ゆらゆら、また瞳が揺れて、捕えられて、
「…可愛すぎんだよ。」
「え、」
ため息混じりに聞こえた声は、想像もしていない言葉。
苦しそうな顔。
意味が分からなくて固まる私。
「誰にも見せんなよ。」
「っ、」
気がついたら、すっぽりと爽の腕の中に抱き止められアールグレイの香りに包まれていた。
一気に鼓動のリズムが崩れて、音を立てて騒がしくなる。
パニックになる頭の中、でも不思議と抵抗しようとは思わなかった。
なんだか心地いい、そう感じてしまった。
数秒ほど私を抱きしめて、
「…大変、申し訳ございません。」
私から離れ、眉を歯の字にして悲しげに微笑えんで見せた。
執事のときの爽と、さっきの爽、
どっちが本当の爽なの?