君の全部になりたい【完】
4.君より大切なものなんてないから
「きゃー!火が出てる!」
事の発端は授業中に聞こえた、どこかのお嬢様のヒステリックなこの叫び声だった。
その声に先生が教室を出て確認すると、高等部棟、一階の一番端にある理科室から火が立ち込めていた。
みんなパニックになり、騒然となる高等部内。
緊急を知らせる放送アナウンスが流れる。
『高等部棟、一階の理科室で火災が発生しました。直ちに中等部グラウンドへ非難してください。繰り返します…』
こんな時でも執事は令息令嬢を教室まで迎えに来る。
「美桜様、避難しましょう。」
1番最初に迎えに来たのは、私の執事、爽だった。
走ってきたのか乱れている髪と呼吸。
教室から出て、爽についていく。
中等部グラウンドに向かう途中、火が出ている現場を初めて目の前にした。怖くて、足がすくむ。