君の全部になりたい【完】
もう人の力ではどうにもできないほど燃え上がる炎。
でも自然と足が止まった。
…理科室の隣には、うさぎ小屋があるの。
「ねえ、爽、このままだとうさぎ小屋に火が移っちゃう」
私を誘導するように先を急ぐ爽に声をかける。
「美桜様、お下がりください。」
やだよ。最近やっと懐いてくれた気がしてたのに。
私が助けないと。ぴょんすけとぴょんこを。だって私生き物がかりだもん。
「いいから、離れてくださいっ」
「やだっ。二匹を助けに行かないとっ!」
パチパチと音を立てて激しくなる炎。
うさぎ小屋まで移るのは時間の問題。
爽の言葉は無視して、うさぎ小屋に近づこうとする。
「美桜!いい加減にしろ。」
手首を掴まれて行手を阻まれる。振り返って見ると爽が本気で怒っているのがわかった。
諦めろ、そういう表情だった。