君の全部になりたい【完】
「お願い、行かせて!」
あの可愛い二匹が、炎に包まれていくのを見逃せっていうの?
無理だよそんなの。
まだ一ヶ月くらいしか世話してないけどさ、二匹ともすごく小さくて可愛いんだよ?
「ダメに決まってんだろ」
重たく低い声に、身が震える。
「お願いっ」
「じゃあ、俺が行く。」
その言葉に耳を疑う。
何かを決めたような爽の顔。
今まで私を掴んでいた手は呆気なく離れた。
「え、爽が?」
「美桜様。」
私に目線を合わせるように屈んで、
優しく名前を呼んで、手を取り、
「すぐ戻りますので、待っていてください。」
まっすぐ目を見て、私にそう言った。
安心させるためなのか、とびきりの笑顔。
周りの音が何も聞こえなくなって、爽に合う焦点の後ろには燃え盛る火がぼやけて見えている。