君の全部になりたい【完】
「おかえりなさいませ。」
「ただいま!」
爽の迎えに上機嫌で返事をして、ドレスルームで待つメイドたちに振袖を脱がせてもらう。
ふぅ〜開放感。
ドレスルームを出るとすぐ目の前には分かりやすく不機嫌な爽の姿。
私が何か言うのを待ってるような、目線。
「お見合い相手、すごくいい人で、楽しかったよ!」
だから結果報告をした。
保護者的な意味で心配してるかなって思ったから。
「そうですか。」
単調で、冷静な声色。
目の奥には何か潜めていそうな、そんな無力さを感じる。
「誠さんと意気投合しちゃって、人生初の男友達が出来ちゃった!」
その瞬間、爽の目に力が入ったのがわかった。
「へぇ。」
低い声が私のことをまた射抜いて、
翻弄するように見つめてくる。