君の全部になりたい【完】
…帰ってからが恐ろしい。
急いで不慣れなお会計をして、外に出る。
「あ、うちの運転手来た。美桜も乗って帰れば?」
少し先に、いつも恵を迎えにくる車が止まっているのが見える。
「大丈夫。すぐ爽に電話するから。」
「そっか、じゃあね!」
「うん!」
恵と別れて、ケータイを手にして急いで爽に電話をかける。
やばいやばい、絶対怒られる。
プルルルルとコール音でさえ、怖い。
「もしもし、爽」
「美桜様、本当に9時に帰宅されるのですね?」
電話の向こうの声は、とてつもなく低い。
ああ、不機嫌な爽の顔が頭に浮かぶ。
「ご、ごめんなさい。」
「はぁ。もう近くまで来てますので、迎えに行きます。」
そうだ、GPSがあったんだった!
私たちが動いてないのなんてお見通しなの、忘れてた。
そんなこと思いながら、カラオケ店の前で爽を待つ。