君の全部になりたい【完】
「てか、こいつも年下じゃね?」
そんなこと言って、煽って、だめだよ。爽を怒らせちゃ。
「チッ、うっせえな。さっさと散れよ。低脳が。」
ドスの効いた太くて濁った声は、爽から発されたもの。
そのただならぬオーラに気が付いたのか、大学生たちは怯えてわなわなと去っていく。
次はきっと私が怒られる番。
怒りに満ちたオーラのまま、振り返って私へ体を向ける爽。
街灯に照らされて、背の高い爽の影が落ちてくる。
怒られることが怖くて、俯いたまま顔を上げることができない。
「何もなくて良かった。」
想像していた声とは全く違い、柔らかい優しい声に思わず顔をあげる。
私の怯えきった表情に、優しく目尻を下げるの。