君の全部になりたい【完】
「それは、ないよ。」
だって、お嬢様と執事だもん。
きっと、爽のほうが大人で賢いからよく分かってる。
「そーかな?そんなキスマークつけておいて?」
「へ?!見えてた…?」
顔に熱が集まって、咄嗟に首元に手を置く。
…鏡で確認して、制服からは見えてないって思ったのに。
「ちょっと前屈みになったら見えるよ。普通にしてたら見えないけど。」
「…はぁ、もう困っちゃうよ。意地悪なんだから。」
きっと、ああやって私のこと揶揄ってるんだ。
昔から、爽にはそういうところがある。
私にはとことん意地悪なの。私の反応を見て楽しんでるんだ。
「…意地悪、とはまた違うと思うけどね。」
小さな声で、そう呟く恵の声は私には聞こえていなかった。