君の全部になりたい【完】
誠さんとの電話を切り、爽がいるであろう教室を覗くと、
「爽くんって本当頭いいよね。」
「そんなことねぇよ。小夜だってイギリスでトップだったじゃん。」
二つの机を繋げて、きゃっきゃと仲睦まじく並んで会話する男女。
爽と、小川さん。
黒い感情が、私の全身を瞬く間に支配する。
「いや、トップは爽くんだったでしょ?」
「そうだったっけ?」
「やだ、忘れたの?」
忘れた、なんて言って自然に笑う爽に怒りさえ覚える。
勉強をしていたのか、2人の机にはノートや教科書が開かれている。
私が来たことになんて全く気づかずに、微笑み合う2人。
好きな人にしかしないよ、って言った誠さんの言葉をちょっとでも信じた自分が恥ずかしい。
「爽くん、次はここ教えてくれない?」
おねだり上手な小川さんは、上目遣いで爽にそういう。