君の全部になりたい【完】
すると、はぁって大きなため息が聞こえて、
「誰がそんなこと言った?」
甘く、包み込むような瞳に息を呑む。
「俺はどんな形であれ、美桜の側にいれたら幸せだよ。」
「でもさっき、こんな関係嫌だって、」
「あれは、そういう意味じゃなくて……美桜の全部になれたらいいのにって意味。」
また、その話…?
見つめる視線、分かってお願い、って言われてるみたいだった。
「…わかんないよっ、」
「俺が、深山家の人間じゃなければよかったのにね。」
意味不明な言葉を紡いで、
切なく瞳を揺らして、また心のど真ん中、容易に撃ち抜くの。
爽は、いとも簡単に私の髪を掬い上げて
ゆっくりと私から視線を逸らして、爽の手に乗る髪に口付けを落とす。
「っ、」
込み上げる熱に、思わず俯く。
「ふっ、可愛い。」
そうやって、余裕に微笑むんだ。
爽には敵わない。"全部"の意味は今日も教えてくれなかった。