君の全部になりたい【完】
そう言って小川さんの白くて小さな手に乗るのは、コーヒーカップ。
綺麗な曲線を描き、白地に水色のラインが入ったコーヒーカップは爽の手に収まる。
「これ、いいの?」
少し戸惑った爽の表情。
「うん!爽くん、コーヒー飲むの好きでしょ!」
満面の笑みでそう答える小川さんに、もう何も勝ち目はないと思った。
あんなに可愛いコーヒーカップ私には作れない。
メイドコースの人は、家庭科であんなもの作るんだね。
私が作ったこんな水色のコースターなんて、鼻で笑われちゃうね。
…ああ、恥ずかしいな。1人で舞い上がって、爽にこんなもの渡そうとして。
「あ、そうだ。マフィンもついでに作ったの。どうぞ」
「まじで?美味そう。」
"ついで"に作られたにしては、とっても美味しそうなマフィンが登場して、爽をさらに笑顔にする。