君の全部になりたい【完】


胸が狭くなって、黒い濁流が流れてくる。



ついで、であんなマフィン作れるんだ。



「美桜、大丈夫?」



ただぼーと廊下の2人を見つめる私に恵が心配そうな声をかけてくる。



「うん、大丈夫。恥ずかしいね、1人でわくわくしちゃって。」



へらり、笑って見せると、恵は眉を下げて微笑み返してくれた。



あんな素敵なコーヒーカップを受け取った爽に、こんなコースターは渡せない。



放課後、爽が迎えに来くる前に、コースターは急いで捨てようと、ゴミ箱の前に立つ。



「捨てんの?」



教室にはもうほとんど誰もいなくなってて、背後から聞こえた声に驚いて振り向く。


「新堂くんっ、」


かの有名なチョコレートブランドSINDO Chocolatの御曹司、新堂梓(しんどうあずさ)くんの姿。


無論幼稚園からずっと一緒なわけで、気心はわりと知れた仲。
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