君の全部になりたい【完】
「っ、」
恥ずかしくて俯く私に近づいて、壁まで追いやる爽。
爽の強気な目に、何かされるって危険なサイレンが脳内に響く。
「爽、ここ教室っ、」
止める言葉を言うけど、
「分かってる。でも、美桜が悪いんだよ?」
教室で、執事とお嬢様がこんな距離で、バレたら大問題だよ?
分かってるのに、体が動かない。
「何言って、んん」
言いかけた言葉に被さられた激しい嫉妬は、また私の鎖骨に吸い付いて、俺の、って赤い印を残す。
ちくっと、心と鎖骨に痛みが襲う。
「お仕置き。」
不適に笑う爽は、一瞬で執事の顔に戻り『帰りましょう』なんて言って、私のカバンを奪う。
放心状態になる私なんてお構いなしに、何もなかった顔をするの。
…私ばかり、踊らされてる。