君の全部になりたい【完】
「っ、……は、い」
詰まったような声は、辛うじて私の耳に届いた。
…そうだよね。誰に抱きしめられようと爽にはきっと関係のない、どうでもいいこと。
新堂くんはなんでこんなことするのっ?
爽の言葉に落胆して、思わず抵抗することを忘れてしまう。
「はい、って言う割にすごい険しい顔してるけど?」
さらに挑発するような言葉をかける新堂くん。
「……早く離れろ。」
その声は、パーティーに参加する人々の声でかき消され、
「ふっ、素直じゃねーな。じゃあね、寺門。」
新堂くんの呆れた渇いた笑い声と同時に腕の中から解放されて、新堂くんは手を振って消えていってしまう。
「へ、あ、うん」
残された私は放心状態。
…なんだったの?
爽を見上げても、新堂くんのことを睨んでいるばかりだった。