人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「綺麗ですね。飴細工と言っても結構な値段がするでしょう?」
「ああ、そうだ。だから、我が国でも菓子職人に作らせてみてはどうかと思った。ただ、まったく同じものでは真似しただけになってしまう。我が国特有の個性がほしいところなのだが……」
イレーナは少し考えて、思いついたことを提案する。
「でしたら、チョコレートではいかがでしょう? 飴細工もよろしいですが、すでにナグス王国で流行っているのでしたら、こちらでは少し趣向を変えてみるのです」
「なるほど。応用するのだな。では、飴細工とともにチョコレートでも挑戦させてみよう。さっそく菓子職人ギルドに提案せよ」
ヴァルクに言われてテリーは「かしこまりました」と返事をしてそのまま退室した。
リアたちもにこにこしながら「私たちも失礼いたします」と言って出ていってしまった。
久しぶりのふたりきりに、イレーナは妙に緊張した。
ヴァルクはソファに腰を下ろし、となりに座るようイレーナを促す。
イレーナがとなりへちょこんと座ると、彼は先ほどの話の続きを始めた。