人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「おい、説明しろ」
侯爵が命令すると、黒ローブ姿の男が口を開いた。
「紅茶に1滴でおよそ半日後に眩暈や痺れなどの症状を起こします。2滴で下痢や発熱を発症します。そして……」
「まどろっこしいな。もっと効果のあるやり方を言え!」
「はい。5滴で絶命します」
アンジェの表情が強張った。
今まで叩いても怒鳴ってもまったく反応のなかったアンジェがわずかに狼狽えている。
それを見た侯爵はにんまり笑った。
「アンジェ、わしの教えを口に出して言ってみろ」
「美しい宮殿にいる害虫は1匹残らず駆除しなければなりません」
「そうだとも。お前にとっての害虫は、わかっているな?」
「もちろんでございます」
黒ローブ姿の男がアンジェに真顔で淡々と説明をする。
「使用後は火をつけて燃やしてください。この容器は特殊な材質で跡形もなく消え、証拠隠滅ができます」
アンジェは真顔で薬の容器を見つめる。
侯爵は念を押すように言いつける。
「お前の命はわしの手にある。失敗は許されんぞ」
「承知しております」
アンジェは冷たく返事をした。