人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
12、正妃を怒らせてしまいました
久しぶりにアンジェの茶会に呼ばれたイレーナは控えめなドレスで出席した。
最近、アンジェの関係者と思われる一部の者たちからの反発が強く、城内を歩いているだけでよからぬ噂を流された。
(なるべく目立ちたくないのに、目立ってしまうのよね)
イレーナはため息をつく。
せめてアンジェより質素な格好をして自分を際立たせないようにしていた。
相変わらずアンジェは美しかった。
イレーナよりも上質な生地で作られたドレスと高価な宝石を身につけ、立ち居振る舞いはしなやかで、まばゆいくらいの気品を放っている。
「最近あなたのご活躍を耳にするわ。素晴らしい功績ね」
「ありがとうございます」
アンジェの話に落ち着いて応じるイレーナ。
「今日はバルコニーのテラスに席をご用意いたしましたのよ。晴れてとても気持ちがいいから外でお茶でも飲みませんこと?」
「はい」
茶の用意はすでにされていて、使用人たちは部屋の隅で待機している。
イレーナはアンジェに促されるまま、バルコニーへ向かった。