人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
テーブルにはチョコレートやケーキ、スコーン、マカロン、プディングなど多くの菓子が並び、周囲にはピンクや赤の薔薇が飾られている。
「綺麗ですね」
「私たち妃はいつも陰で支える存在ですもの。たまには息抜きしないとね」
「そうですね」
イレーナは純粋にアンジェの言葉を受け入れた。
「あなたたちは下がってちょうだい。ふたりきりで話がしたいの」
アンジェは以前と同じように使用人たちに部屋から退室すよう命じた。
イレーナも侍女のリアに席を外すよう指示する。
アンジェとふたりきりの茶会は二度目だ。
まったく警戒することはなかった。
「最近、陛下とは上手くやっているのかしら?」
「え、ええと……まあ、ほどほどには」
「そう。わたくしはほとんど顔を合わせることがないのよ。あなたのことを余程お気に召していらっしゃるのね」
「そうなのでしょうか。最近はご多忙のようでたまに会う程度ですけど」
アンジェはふわっと気品あふれる笑顔をイレーナに向けている。
その表情を見ると、イレーナはいくらか心がほぐれた。