人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

13、あなたの名誉は命をかけて守ります


 あれからイレーナは自室へ戻って待機するように言われた。
 騎士団長がアンジェに付き添い、数人の医師が彼女の診察をしているらしい。
 イレーナは汚れたドレスを着替え、鬱々とした気分で落ち着かなかった。
 アンジェが吐血したときの様子が頭の中に強烈に刻まれている。
 思い出すと眩暈がして吐き気をもよおした。

「イレーナさま、大丈夫ですか? ご気分は、優れないですよね」

 あんなことがあったからイレーナが参ってしまっているのだとリアは言っている。
 だが、イレーナには少しの心当たりがあった。

(あのお茶には両方に毒が入っていたのではないかしら?)

 イレーナはひと口飲んだが、そのあとアンジェに中身をぶちまけられた。
 つまり、ほとんど飲んでいないイレーナには軽い症状しか出ていないのだ。

(だとすれば、犯人は妃をふたりとも殺すつもりだったの?)

 イレーナは考えようとするが頭痛が激しく頭が上手く回らない。

「リア、お願いがあるの。私も医者に診てもらいたいわ」
「え? イレーナさま、具合がよろしくないのですか?」
「ええ、きっと……これは憶測だけど、私にも……」

 リアと話している途中に、突如部屋の扉が豪快に開けられた。
 そして、多くの近衛騎士が侵入してきたのである。
 彼らはイレーナの護衛騎士ではなかった。


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