人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
リアが嫌悪の表情で彼らの前に立ちはだかる。
「何事です? ここはあなたたちが勝手に出入りできる部屋ではありません」
「うるさい。その侍女を追い出せ」
現れたのはスベイリー侯爵だった。
リアは騎士たちに捕らえられる。
「きゃあっ! 何をするの?」
リアが部屋から追い出されると、侯爵はイレーナに向かってにやりと笑みを浮かべた。
「よくも、わしの娘に毒を盛ってくれたな? この弱小国の小娘が! 」
「何のことでしょうか?」
「しらばっくれるな! お前がアンジェに毒を盛ったことを証言する者がいるのだぞ」
イレーナが怪訝な表情をしていると、侯爵の背後から現れたのはアンジェの侍女だった。
彼女は震え声で話す。
「わ、私は……イレーナ妃に脅されて、仕方なく……」
「な、何を言っているの?」
(アンジェさまの侍女と話したこともないのに!)
驚くイレーナが言い分を口にする暇を侯爵は与えなかった。
「イレーナ妃を正妃殺害容疑で投獄するのだ!」
侯爵の声が高らかに響くと、イレーナは近衛騎士たちに両腕を掴まれて部屋から無理やり引きずり出された。
(こんなの、めちゃくちゃだわ!)