人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

「お前はいつも形式に囚われず、そのときその場に必要なことを提示してくる。そうだな。パーティに金を使うくらいなら、孤児に本を送ってやるほうが国の将来のためになるか」

 イレーナはがばっと身体を起こした。

「そうです。お金がなくて学校に行けない子供たちはまだたくさんいます。奨学金制度を整えたところで、結局全員がその恩恵を受けられるわけではありませんから。近い将来は教育の無償化も考えておりますが、まだまだ財源が足りません。他の者は増税を勧めておりますが、まだ治安が安定していない状態で増税したら民の反発は凄まじいと存じます。まずは私たちが無駄な贅沢を辞めるところから始めましょう」

 イレーナは怒涛のごとくしゃべりまくったせいか、ヴァルクは目を丸くして黙っている。

「……言い過ぎました。申しわけございません」
「謝るな。お前のそういうところが、昔から俺はたまらなく気に入っているんだ」
「ありがとうございます。ですが、気になりますね。私は昔、ヴァルクさまにどんな対応をしたのでしょう?」
「知りたいか?」
「よろしければ」

 ヴァルクはベッドに腰を下ろし、イレーナの肩を抱いた。

(わ、わざわざこの格好で話すの?)

 ヴァルクはまったく気にしていないようだった。



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