人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 とはいえ、まだ行事は終わっていない。
 明日も早くから多くの人と会う予定になっている。

「あ、あの……いろいろ、今は(心の)準備が……」
「気にするな。明日の午前中の予定はすべてキャンセルだ」
「ええ? なぜそのような……」
「正式な妻となったお前との初夜を誰にも邪魔させるつもりはない!」

 声高に宣言するヴァルクに、イレーナは半分嬉しさ、半分複雑な気持ちだった。

(それはあまりに横暴な……テリーさんが可哀想だわ)

 そうは思うが、イレーナもゆっくり過ごしたい気持ちはある。

「とりあえず何か理由を作って私と一緒にいたいわけですね?」
「ああ、そうだ」

(そんなに欲求不満だったのね。仕方がないわ。もうひと月以上ご無沙汰だものね)

 イレーナはすんなり受け入れた。
 これは妻としての務めだから、拒否することなどできない。

(まあ、拒否なんて絶対しないけどね♡)

 久しぶりにぎゅっと抱き合ってキスをした。
 イレーナは上目遣いで甘えるように声を出す。

「久しぶりだから優しくしてくれます?」
「俺はいつでも優しいぞ」
「うそばっかり。寝かせてくれないくせに」
「当たり前だ。寝るなよ」
「きゃああっ(歓喜)」

 こうしてバカップル(皇帝と側妃)は正式な夫婦となった。


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