人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

16、激甘な皇帝陛下に溺愛されています

 それからはまた、多忙な日々の繰り返しだった。
 イレーナは正妃になったわけだが、ひとつ気がかりなことがあった。
 それは、お互いに愛情があるのかどうか。
 気持ちを確かめ合ったことが一度もないのである。

 身体の相性はもう、それこそ数えきれないほど確かめ合ったが、それは皇帝と妃との関係でこれまでずるずると続けてきたものである。
 というよりは、皇帝の欲求を晴らすためにイレーナが付き合っていただけだ。

(どうしよう、私すごく彼のことが好きだわ)

 いつの間にこれほど心が奪われてしまったのだろう。
 正妃とはいえ、形だけのものであると自分の立場をわきまえてはいるが、感情はそうもいかなかった。

(一度、彼の気持ちを聞いてみたい。でも、それで関係がこじれてしまったら……)

 イレーナは不安だった。
 なぜなら、皇帝は一度もイレーナをどう思っているのか直接口にしていないからだ。
 なんとなく、イレーナが勘違いしそうなセリフを彼は口にしているが、肝心な『愛の言葉』は一度もない。

 そんなときだった。

「ご懐妊です」

 イレーナは宮廷医師にそう告げられた。


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