人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「へっ?」
とイレーナは呆気にとられたように固まった。
「まあっ! おめでとうございます!」
リアが歓喜の声を上げた。
使用人たちも口をそろえておめでとうの嵐である。
最近ずっと微熱があり、連日の激務のせいか少し歩いただけで疲れて座っていたくらいだ。
何か病にでもかかったのではないかと思い、今日は静養して主治医に診てもらった結果がこれだ。
「え、だってマタギ草が……」
「そういうこともあると思います」
「避妊していたのよ?」
「それを超えるほどの愛だったのですよ」
リアは冗談で言っているのか本気なのか、イレーナには判断つかない。
頭の中が混乱している。
しかし思い起こしてみると、あのパーティの夜が原因かもしれない。
久しぶりだからと浮かれていて、イレーナは毎朝飲んでいるマタギ草の薬のことを忘れてしまったのだ。
いや、その機会を奪われたといっても過言ではない。
だって、ヴァルクは翌日の昼間までイレーナを離さなかったのだから。