人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 予定されていなかった皇帝の出現に村は大騒ぎだったが、人々は活気にあふれ、式典は大成功だった。
 村中が盛り上がっているあいだ、イレーナは教会の施設で休ませてもらっていた。

「ねえねえ、大丈夫? 正妃さま」
「こらっ! 敬語を使わなきゃだめよ」

 子どもたちが声をかけてくれるので、イレーナは笑顔で対応した。
 
「ええ、少し体調がよくなかっただけなの。心配してくれてありがとう」

 そう言うと、子どもたちは気遣ってくれた。

「イレーナさま、あまり長居するより早く皇城へ戻られたほうがよろしいかもしれません。それに、陛下にそのことをお伝えしなければ……」

 リアの言うとおり、隠すわけにはいかない。
 これはイレーナだけの問題ではなく、国の命運にかかっているのだから。

「次にお会いしたときにお話しするわ」

 その直後のことだった。

「ねえ、正妃さまのお腹に赤ちゃんがいるよ」
「ええーっ、うそお!?」

 突然、幼い子が無邪気な顔でそんなことを言うのでイレーナは仰天した。

(どうしてわかっちゃったのーっ!?)


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