人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 子どもたちが「赤ちゃん、赤ちゃん」と騒ぐので、リアが慌てて止めようとした。
 外部に洩れでもしたら大変なことになる。

 すると、ひとりのシスターが十字架を握って祈るように子どもたちに言った。

「神のご加護を受けるときは静粛であるべきです。せっかくの授かりものですよ。みなさんで静かにお祝いして差し上げましょうね」

 子どもたちは一瞬目を丸くしたが、やがて「はあい」と返事をした。

「私たち静かにします」
「決して外で騒ぎません」
「赤ちゃんのためにお祈りします」

 子どもたちが驚くほど素直に応じたので、イレーナは驚き、そして安堵した。
 シスターはにっこりと微笑んだ。

(ここが貴族のサロンだったら明日には社交界で大騒ぎだったわね)

 貴族に限らず大人たちはすぐに噂を広めてしまう。たとえそれが駄目だとわかっていても。
 目の前の子どもたちを見ていて、彼らがこれから学校へ行き、立派に育っていくのだと思うとイレーナの心は喜びに満ちた。

「ほう、この施設に赤子が生まれたのか? どこにいる? 祝福をやろう」

 ヴァルクの声がして、全員一斉に固まった。



< 167 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop