人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
しかしヴァルクはイレーナの予想外のことを口にした。
「もしや医師の誤診か? あいつ、何を聞いても歯切れの悪い回答をするのだ。能力がないならすぐにでも首に……」
「私のせいなのです。医師に黙っていてほしいと伝えました。実は私、病気でも体調不良でもないのです!」
勢いで言い放ったイレーナに対し、ヴァルクは呆気にとられている。
だが、イレーナがお腹の前で手を組んでもじもじしている様子を見て、ヴァルクは察した。
「お前、もしかして……」
イレーナは急に恥ずかしくなり、頬を赤らめながら上目遣いでヴァルクを見つめた。
ヴァルクは驚いた表情でイレーナに問いかける。
「この施設で赤子が生まれたわけではないのか?」
「……はい、そうです」
「では、赤子の話は……お前のことか?」
「そのとおりです。ヴァルクさま、私はあなたの子を授かったのです」
ヴァルクはさらに驚いた顔をして目を見開き、しばし固まった。
イレーナは不安のあまりドキドキした。